ATERA PEOPLE 10

あてらperson10 
読夢(ドリーム)の会
藤井千江子さん、土屋則子さん
本が好きだから、その楽しさを伝えたい



図書館で毎月開催される「おはなし会」

大多喜では月に一度「おはなし会」が開かれている。子どもたちに絵本の読み聞かせをする活動だ。場所は大多喜町図書館天賞文庫、日時は毎月第3日曜日の午前10時30分から。およそ1時間の会では4冊程度の絵本の読み聞かせと、季節に準じた工作遊びを行う。参加費は無料。主催する「読夢の会」は町内で暮らす50~80代の女性たちが中心のボランティア団体で、今年、結成から14年目を迎える。4年前の2013年には「子どもの読書活動優秀実践団体」として文部科学大臣から表彰を受けた。現在16名が参加している。



絵本を読んで、夢を持ってほしい

そもそものきっかけは14年前、当時の図書館職員だった女性が図書館を訪れる子どもたちに絵本を読み始めたこと。ひとりの活動は友人や利用者に広がり、やがて20人を超える団体になった。「読夢の会」という名前は会の発足後、会員からの公募で選ばれたのだという。由来は「(絵本を)読んで、(子どもたちに)夢を持ってほしいから」。込めた思いは今も変わらない。
「年度始めに1年分の読み聞かせ計画を作り、担当を決めます。推薦する本を持ち寄って、実際にどれを読むか選ぶのは有志による選定委員。お正月や節分、ひな祭り、お月見、クリスマスなど、季節の行事を題材にしているものはやっぱり入れたいですね。桜や菜の花、夏の虫たち、紅葉、雪など四季を感じられるものもいい。定番の名作と最近出た新作も混ぜるようにしています」



目を輝かせて夢中で聞くという体験を、ここで

子どもたちが集まってきた。手に持っているのは「おはなしかいカード」。受付でシールをもらって自分のカードに貼りつけるのも楽しみのひとつだ。12枚たまると『ぐりとぐら』の手作りマスコットがもらえるという特典もある。部屋に入ると子どもたちは前方の絨毯へ。一緒に来たお父さんお母さんは後ろの椅子で、絵本だけでなく「子どもたちが聞いている様子」も見られる。参加する子どもは3~6歳が多いが、お母さんにおぶわれている赤ちゃんや小学生の姿も。
時間が来ても最初からすぐに読みはじめたりはしない。手遊びやわらべうたでコミュニケーションをとりながら、少しずつ子どもたちの意識を集めていくのだ。取材が行われたのはもうすぐクリスマスを迎える12月半ば。この日は『おもちのきもち』『あかずきんちゃん』『まどからおくりもの』『アンガスとあひる』の4冊が読まれた。
「本のタイトルが見えないようにハンカチで包んで、子どもたちの前に座ってからそれを開いて取り出すんです。表紙を見せて何の本かがわかると、みんないろんな反応を返してくれる。『それ知ってる!読んだ!』とか『おもちに顔があるよー』って。目が輝き始めるんですね。真剣な眼差しで聞いてくれる姿を見るとやっていてよかったなと思います」





活動日数200日、楽しいから続けられる

読夢の会の活動は多岐に渡る。図書館でのおはなし会のほか、町内の保育園や小学校で行う読み聞かせ、中学校や高齢者が住むグループホームでの朗読会、聴覚障害の方のための広報誌の音読、夏休みに開催される「大人のためのお話会」、町で生まれた赤ちゃんのための「ブックスタート事業」。かつては町内放送で町の民話を語る活動なども行っていたそうだ。ミーティングやイベントごとの事前準備なども加えると、なんと活動日数は年に200日を超えるという。
「みんなでやるから楽しいし、だからこそ続けられるんだと思います。家のことや体調で活動に参加するのが難しい時は休むこともできますし。やるからには聞いていただく方に楽しんでほしい、喜んでほしいと思うから、日々勉強ね。夏の『大人のためのお話会』の前にはいつも、千葉県出身で元NHKアナウンサーの宮田修先生に朗読の指導をしていただいています」



本が大好き。子どもたちにも本のおもしろさを知ってほしい

年齢を感じさせないエネルギッシュさの秘訣はどこにあるのだろうか。「私なんかまだ若手。もっと大先輩がいっぱいいるもの」「先輩たちがみんなパワフルで元気だからね」と顔を見合わせて笑う。メンバーは全員女性、大多喜町内と近隣エリアに住む主婦だ。家庭で専業主婦だったという人もいるし、保育士や小学校の教員だったという人もいる。共通点は「本が好き」なこと。
「やっぱり本が好きなんだなぁと思います。今でも本から学ぶことは多いですね。自分の体験ではないけれど、本の中の世界と出会うことで自分の考えや理解が広がっていく。だから子どもたちにも知ってほしいんです。いいことも、悪いことも、この世界にはいろんなことがある。『そうなんだ』という驚きや喜びを、本を通じてたくさん持ってほしいですね。おはなし会はみんなで一緒に本を楽しめる時間だから、私たち自身も楽しみながら、これからも続けていきたいです」
 
本が読まれなくなったと嘆くよりも、本は楽しいよと伝えたい。その気持ちはきっと子どもたちにも届くだろうと思った。何より、子どもたちがおはなしを聞くときの顔がいい。夢中で、ワクワクして、笑ったり、びっくりしたり、ちょっと怖がったりしながら、新しい世界と出会っている顔。この場所で、夢はたしかにつながっている。

読夢の会
 

2003年発足。大多喜町で読み聞かせをするボランティア団体で、現在は16名が活動中。「おはなし会」は毎月第3日曜日、午前10時30分から。

TOP